佐藤卓「塑する思考」

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デザイナーとしてのあり方、デザインの未来のあり方を問う一冊。

塑性とは

本書のタイトルにある「塑する」つまり塑性とは、外部からの力で凹むと、そのまま形を保つ性質のことを指し、例を上げれば、粘土や金属などが該当します。この「塑する」という考え方が本書のキーワードとなっています。
一方、塑性の対義語である「弾性」、つまりスポンジや形状記憶のように、常に自分に帰るような生き方が良しとされているのが社会の常識というイメージが一般的かもしれません。
ただ前述の塑性を、人生になぞらえると、自分の形などどうでもよく、その都度変化してかまわないということなます。つまり、置かれた状況を客観的に受け止め、適切に対応できる状態に自分を置くことができるようになるということです。

塑する姿勢

この考え方を卓さんがとっているということが、とても腑に落ちました。というのも先日「ほぼ日」が上場を気に、卓さんに会社のロゴ制作を依頼し、そのことをほぼ日の中で、糸井重里さんと対談していたのですが、その中で卓さんの塑性を感じるところがありました。
卓さんは当初、ロゴに「扉」の意味を込めていたそうですが、糸井さんは「窓」と解釈していたことが対談中に明らかになったのですが、卓さんはその意見を否定することもなく、その考え方いいですねと同感していました。
このように、卓さんはひとつのメッセージを自分のアイデア、考えに取り入れるのが上手な方だと思います。だからこそ、Eテレなどのデザイン番組のディレクションを執り行えるのでしょう。

唾液とデザイン

この本はデザインの手法的なものは基本的には書いてないのですが、パッケージデザインについて述べている章があり、過去の仕事を振り返るとともに、いくつか参考にできる考え方が書いてあります。
それは食べ物や飲み物のパッケージデザインでは、それを見た人の「唾液」を誘発できるかどうかということ。

佐藤卓さん

以前から卓さんは「デザイン界のワクワクさん」と勝手ながらそう感じていたのですが、この本を読んで一段とその思いが強まったように感じます。ホントにデザインのことが好きで、デザインの力を信じている。そんな印象が強まりました。この本の一節にあるように、デザインが小学生の必修科目になったらいいですね。